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こころのメッセージ


【リメンバー福岡の活動報告】自死遺族の集いの取り組みについて

リメンバ-福岡 自死遺族の集い 代表 小早川 慶次

H30年1月掲載

経緯・目的

自死遺族の集いは、大切な人を自死で亡くした遺族が出会い、語り合うことを通して悲嘆をわかちあい、共に支えあうことを目的としています。私たちリメンバー福岡は、2004年9月、九州で初めての自死の集いを発足させました。それまでは、九州で自死の遺族が集う場所・接点が全くありませんでしたが、福岡市精神保健福祉センタ-の側面的な支援に恵まれ、出発にこぎつけることができました。

自死遺族の集いとは

リメンバー福岡では、2か月に一度、自死遺族の集いを開催しています。県内外から毎回15~20名、多いときには30名を越す参加があり、そのうち初めて参加される方も4~5名おられます。これまでに、延べ約1,300人以上が参加されましたが、参加のご遺族の方にも設営や受付などの役割を担ってもらいながら、毎回、丁寧な集いを心がけることで開催を継続してきました。

集いは、複数の小グル-プに分かれてわかちあい(語り合い)を行います。その理由は、家族の誰を亡くしたかによって、自死の受け止め方や悲嘆の角度が若干異なり、遺族同士が感情的な対立で傷つけあうリスクを避けるためです。グル-プは、亡くして日が浅い方同士、男性同士の輪ができることもあります。また、「違う立場の方の話も聴きたい」場合には、希望に沿ったグル-プに入っていただくこともできます。

活動の2つの柱

私たちリメンバ-福岡の活動の柱は、主に2つあります。

1つ目の活動の柱は、安全に語ることができる空間を継続して準備することです。プライバシ-を尊重し合い、お互いに傷つけあわない安全な空間で信頼できる関係がないと、わかちあいは成り立たないからです。具体的には、「遺族の心に土足で踏み込まない」「遺族の主導権を奪わない」「遺族の心を分かったふりはしない」「決して遺族を傷つける遺族会であってはならない」等、集いに参加するにあたっての「約束」を徹底しています。「傷ついた」かどうかは、相手が「傷つけられた」と感じるかどうかですので、参加する遺族同士にも「約束」をしてもらいます。

2つ目の柱は、自死への偏見や誤解、風評などを少しでも減らし、必要としている遺族が集いに参加しやすい環境につなげるために、講演会の開催や啓発活動を行うことです。具体的には、地元福岡や近隣の自治体・団体等から依頼があった場合には、運営スタッフが出向いて講演や研修会、会の告知を行っています。

集いの効果

自死直後には、警察の取り調べをはじめ、死後の様々な手続き、遺された家族の体調不良、経済的・法的なトラブルなど、混乱の渦中に巻き込まれます。自死で遺された家族は、奈落の底に突き落とされた衝撃と心境の中、これらへの対処を同時に進めなければなりません。現在、福岡県弁護士会の尽力により、北九州、福岡の両市で自死遺族法律相談が開催され、自死発生後の様々な問題を少しづつ整理していくことができます。また、集いに参加するなかで、悲嘆と向き合い、気持ちを整理し、折り合いをつけるといった自身の内面的な気づきから、日常生活のベ-スを取り戻すきっかけを得ることもできます。

今後の活動に向けて

自死遺族の考えは様々です。「そっとしておいてほしい。」「静かに故人を悼む時間を奪わないでほしい。」「家族の自死には触れてほしくないし、自死(自殺)という言葉さえ聞きたくもない。」そんな遺族もおられます。その一方で、「同じ体験をした仲間に会ってみたい」と願い、何とか希望を見出そうと会の情報を必要としている遺族の方もおられます。

九州各県でも、遺族同士が語り合える場が開催されるようになりましたが、福岡県内では、わかちあいの会や集い等に参加されているのは自死遺族のわずか0.1%しかありません。沈黙の悲しみを抱えたまま、仮面をかぶって生きている多くの遺族の中には、参加したくても参加できない家庭や社会の見えない壁が存在するのも事実です。まずは行政や公的機関などの関係者に自死遺族の集いの存在や、自死発生後に家族が置かれる状況を知っていただくことが大切です。

自死遺族の支援は、まだ道半ばであり、必要な人に必要な支援の手が届いていません。「届くには、何をすればよいのか」と、仲間とともに模索しつつ、集いの存在意義と自死遺族のニ-ズがある限り、集いの開催を地道に継続して積み重ねていきたいと思います。

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