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こころのメッセージ


勤労者のメンタルヘルスの現状

八幡厚生病院 副田 秀二

H15年8月掲載

 近年、勤労者を取り巻く状況が厳しさを増すにつれ、仕事のストレスを感じる人も増加しています。労働省(当時)が実施した「労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究」では、疾病休業(1ヶ月以上)の理由の約15%が精神障害となっています。

また「平成14年度中における自殺の概要」(警察庁)によると、年間の自殺者の総数は5年連続で3万人を上回りました。その中で勤労者の自殺の原因は、「経済・生活問題」が圧倒的に多く、「自営者」で64.2%、「管理者」53.8%、「被雇用者」で38.0%を占めています。
現役で働く世代である20~50歳代では「経済・生活問題」の他に、「健康問題」「勤務問題」の割合も高く、こうしてみますと勤労者のメンタルヘルスは、社会経済と医学のテーマです。

 労働省(当時)は平成11年5月から「労働者のメンタルヘルス対策に関する検討会」を開催し、その検討結果を基に平成12年8月に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定しました。

その指針の特徴は、労働者自身による「セルフケア」、管理監督者による「ラインによるケア」、事業場内の健康管理担当者による「事業場内産業保健スタッフによるケア」、事業場外の専門家による「事業場外資源によるケア」の4つのケアを推進すると定められていることです。

これは、事業場のメンタルヘルスケアが専門家のみによって行われるものではなく、事業場の全員および事業場外資源とのネットワークがそれぞれの役割を持って相互に協力しながら実施されるものであることを意味しています。
そのため、メンタルヘルス対策に重点を置き、講演会を開催したり従業員のストレス状況をチェックしたりする企業が増加しています。中小企業ではそうした対策の実施率は5割以下ですが、本来は 企業規模を問わず、より多くの勤労者にメンタルヘルス関連の知識を持っていただき、健康増進に役立ててもらうことが重要です。

 企業でのメンタルヘルス対策の要旨は、各々の従業員に対しては、ストレスや関連障害(病気)への理解、対処に関することが中心です。一方、管理職にとっては、それらに加えて、部下のメンタルヘルスの保持増進に関する配慮、メンタルヘルス不全者への対応方法なども重要になります。

ストレスに関連する病気の予防で、個人でできる工夫として、仕事の合間に小休止をとり同僚と話しをすること、できなかった仕事はメモに残して家庭には持ち帰らないこと、趣味を持つことなどを勧める人もいます。

仕事のストレスは回避できないものも多く、対処は難しいかもしれませんが、上司への率直な相談で解決することもあります。それでもなお憂うつな気分や自信喪失(絶望感)、不眠、食欲不振などが2週間以上も続く場合には、専門医への受診の目処になります。うつ状態やうつ病は、以前よりも一層副作用が少ない薬での治療が可能です。

 「心の健康づくり」は事業目的の達成のためのキーワードとなっています。多くの海外研究機関が心の健康状態と企業の経営成果の間に関係があることを報告しています。
わが国でも、経営が順調に推移している企業では、従業員のメンタルヘルスは良好で、事業場の活性度も高いという報告があります。メンタルヘルスケアは、最終的には生産性や活力の向上につながり事業所の目的を達成する上で重要な鍵を持っているとも言われています。

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