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こころのメッセージ


子どもたちの今を考える ~若者支援の現状について~

北九州少年サポートセンター 堀井 智帆

H26年8月掲載

少年サポートセンターとは

北九州少年サポートセンターは、福岡県警察本部少年課の相談機関として、思春期の子どもの問題行動に関する電話相談・立ち直り支援・広報活動などを行っています。
少年サポートセンターで受ける相談は、非行を中心とした薬物・盗み・暴行・暴走行為のほか、不登校・いじめなどの学校問題や家庭内暴力・性の問題などです。

思春期の子どもが抱える問題行動の意味

私たちは、これまで沢山の子どもたちと出会ってきました。私たちが出会う子どもたちは、必ず何かしらの「問題行動」を抱えています。しかし、私たちは、「問題」として捉えるのではなく、子どもたちの“SOS(サイン)”として捉えています。子どもたちの「全ての問題行動は、“SOS”。何か必ず、小さなトゲが心に刺さっている。」と考え、「なぜこの子が、その問題行動を起こさなければならなかったのか。」という、背景に目を向けて子どもたちと関わっていきます。

問題行動とどう向き合うか

思春期の問題行動は、子どもだけの問題では済みません。家族も共に、泥沼の渦に巻き込まれてしまいます。当然、親も大きな悩みを抱えることとなります。親も全力で関わっています。ただ、何をしても変わらず、方法が分からず、途方に暮れています。
子どもたちの問題行動に対して、得てして大人は、怒って子どもの問題行動を変えようとします。「怒る」「叱る」「諭す」などのいわゆる「指導」的関わりです。しかしながら、これらは、「悪いことだ」ということを伝えるには、“少し”は役に立ちますが、問題行動を変えるまでには至りません。なぜなら子どもたちだって、それが悪いことだということくらいは知っているからです。子どもたちには、知っていてもやめられない背景があるのです。その背景まで踏み込んだ支援こそが必要なのです。

 

子どもが問題行動に走る背景とは

よく子どもの問題行動の要因として、「友人」や「学校」や「環境」が挙げられます。確かに、それらは一つの「きっかけ」にはなっているでしょう。しかし、それはあくまできっかけに過ぎません。きっかけは、「原因」とは違います。きっかけではなく、「原因」に気付かなければ、本当に必要な対策やケアをすることが出来ないのです。
私は、保護者の初回相談を受けたとき、とにかくその子が、どんな環境で育ち、どんな体験を重ねた子であるのかに加え、子育て以外でも、保護者がこれまでどんな問題を抱えていたのかについて注意深く探っていきます。例えば、経済的問題や夫婦間の問題、嫁姑や就労、病気など、親が抱えた問題が、子どもたちに与える影響は非常に大きいものと考えられます。「子どもが抱える問題=家族の抱える問題」なのです。家族の問題もひとつひとつ丁寧に整理していかなければ、問題を解決・緩和することは出来ません。
では問題行動がSOSである事例を一つ紹介したいと思います。

盗みの背景は・・・

盗みは、進行性の心の病です。放っておけば、進行していきます。盗みをする子どもは、共通して、心にぽっかりと穴が空いています。本来、この穴を埋めるものは、「家族の関わりや愛情」です。しかし、この関わりや愛情で心の穴が埋まらない子どもは、物やお金で、心の穴を埋めようとするのです。物やお金は、人の心に充足感を与える格好の代償物です。私たち大人だって、欲しいものやお金を得れば、心にフワッと充足感が沸きますよね。子どもたちだって、その事を無意識に知っています。だから、心に充足感が足りないときに、子どもたちは、それを埋めるために、物やお金を盗るのです。
盗みの背景にある感情、それは「寂しさ」です。寂しさを埋める関わりがなければ、いくら叱っても諭しても、どれだけ約束しても止めてあげることは出来ません。しっかりと心の穴が埋まった子どもは、その後、決して物を盗ることはなくなるのです。

 

粘り強い関わりの先に

子どもの思春期の問題行動に、特効薬や即効薬はありません。とにかく諦めずに粘り強く関わることがなによりの治療です。子どもが問題行動を起こし始めたら、42.195キロのフルマラソンがスタートしたのも同然です。大人は、逆らうことも止めることもできません。ましてや、50メートル走のスピード感で終わらせることも出来ません。しかし、必ず「希望」はあります。子どもたちは必ず成長します。それまで、諦めずにしっかりと必要な関わりをしてあげることで、必ずゴールが訪れます。
もし、この北九州で子どもの問題で悩んだら、相談に乗ってくれる相談機関があるということを沢山の人に知って欲しいのです。そして、一人で悩まず相談をして欲しいと思っています。 

北九州少年サポートセンター TEL:093-881-7830

 

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