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こころのメッセージ


依存症からの回復 ~北九州ダルクについて~

北九州ダルクデイケアセンター 施設長 堀井 宏和

H26年8月掲載

はじめに

北九州ダルクは平成9年より、薬物依存からの回復者によって運営され、薬物依存で困っている人たちの『居場所』として北九州市内で活動を開始しました。そしてその傍ら、依存者本人やご家族の相談業務や行政、教育、司法分野の方々に協力を頂きながら啓発活動を行い、ダルクの存在と薬物依存からの回復を社会にアピールしていく事が社会の中での役割になっていきました。

家族からの相談

ダルクには日々、薬物依存に関する様々なケースの相談が寄せられます。その中でも一番多いのはご家族からの相談です。薬物を使っている本人よりもまず先に、身近にいるご家族の方が薬物の問題に気が付きます。そしてあの手この手で止めさせようとしますが、なかなか止めない本人に巻き込まれていき、疲れ果てた状態で相談に来られるご家族が多いです。薬物の問題ですから、近所や身内にはなかなか相談できずに家族だけで抱え込んでしまい、結局出口が見出せず、問題が深刻化してしまってからダルクに来られる様です。

また、「本人が薬物を使っているかどうかはっきり分からないが、もし使っていたとしたらどう対応すればいいのか?」という相談も少なくありません。近年、薬物依存は早期発見、早期治療と言われているように、早めに専門機関と繋がっておけば深刻化しても早期に適切な対応ができ、薬物依存者本人も家族も必要以上に傷つかずに解決へと向かっていく事ができます。薬物依存は死に至る病です。私自身も過去に深刻な薬物依存に陥った為、解決の糸口を見いだせずもがき苦しんだ時期がありました。あの頃、自分も家族も相談機関や専門機関と早めに繋がっていたらそこまで苦しまずに済んだかもしれません。ご家族が薬物の問題にほんの少しでも不安を抱えておられるなら、まず一度だけでもダルクへ相談に来られてみてはいかがでしょうか?相談は無料、プライバシーは守られます。ぜひ気軽に足を運んでみてください。また、関係者の方の来所も歓迎しています。

相談に来られたご家族にはその後、ダルクや家族会などに繋がって貰うことを勧めています。ダルクや家族会に定期的に参加されていく中で、薬物依存に関する正しい知識や情報を得ることができ、依存症という病気に対する理解が深まります。薬物依存は、結婚や就職で落ち着くというものではありませんし、家族の愛情を力いっぱい注げば依存がなくなるというものではありません。また、依存というのは習慣の病気ですから、叱ったり、監視したり、励ますという事では歯が立ちません。また、依存症はただ薬物を止めるだけでは解決しません。薬物を使うことで、隠したり見ないようにしてきた心の闇の部分が、薬物を止めた後『生き辛さ』として浮彫りになっていきます。その『生き辛さ』と向き合いながら、薬物を使わずに生きていく力を身に着けていく事が大切なのです。ダルクでは同じ依存症の仲間と共に経験や感情を共有し、生き辛さと向き合いながら、時にはぶつかったりもしながら素面で生きる練習をしています。

また、家族は良かれと思って本人にしていた事が、逆に依存を進行させてしまっていたというケースが多く、家族会や相談機関に足を運び続ける事で正しい知識と適切な対応を身に付けていきます。そして本人との関係の中で実践していく事で、本人が薬物を止めていく支援をする方向に変化していきます。つまり、本人の薬物問題を家族が責任を負うのではなく、本人にその責任を返していける様になるのです。そして本人は薬物を使うことで起きる事故や負債などの現実に直面できる様になる為、その後本人がダルクや自助グループなどに繋がっていく事ができます。

回復への道のり

ダルクに繋がった本人はどうやって薬物を止めて回復していくかというと、まずは自宅からの通所もしくは寮への入所をしながらプログラムを始めます。一日のプログラムの中で決まっているのは午前中のミーティング(集団精神療法)と午後のプログラム(ミーティング、運動、レクリエーション等)ですが、それ以外は基本的には自由です。しかし、その自由な時間も薬物を使わない様に工夫しながら過ごしていく事もプログラムになります。また、一日二千円の生活費の中から3回の食事や日用品、嗜好品などを計算しながら使うことからはじまり、洗濯や掃除など身の回りの事は全て自分で行います。ダルクのプログラムは言い換えれば自立のプログラムです。1年~2年かけて依存症の部分も含めて、『自分で自分の面倒を見る』スキルを身に着けて就労し、ダルクを卒業していきます。

おわりに

ダルクは少年期~青年期に傷つき、薬物を使わないと生きられなかった人生をもう一度生き直す場所であり、そこには互いの回復の事を考える仲間がいます。薬物を止めたい仲間、そしてそのご家族の方々に私たちの回復のメッセージが届く事を願っています。

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