ムーブ相談室 相談員 蒲原 くみえ
H15年7月掲載
『女である』ことからくる、生き辛さ・・・。
私たちって、女である前に一人の人間です。だけど、娘とか妻とか母とか嫁とか、いろんな仮面(ジェンダー=性別役割)をかぶっています。そして、その人のありのままの姿よりも、つけている仮面の理想像を演じるよう期待されています。
こうした仮面って、夫や子どもやお年寄りの世話をしたり、愛情を供給する役割を担います。これは、相手が満足してこそのもの。自分の気持ちはどうあれ、どんなにがんばっても、相手が満足しなければ何にもなりません。
たとえば、夕飯のおかず。子どもはこれが好きとか、夫にはこれがないと機嫌が悪いと、まず相手のことを考えていませんか?
わがままを言われたり、駄々をこねられるとかわいく思えなくても当然。でも、だめママだからと自分を責めてしまう。
女らしくしなくてはとか、良妻賢母でなくてはとか、よい嫁でなくては…と、らしさの仮面がきつすぎたり、ずっとつけっぱなしていると、ほんとうの自分がわからなくなり、息苦しくなってしまいます。心身の調子がおかしくなるのも当たり前です。
もっと大変なのは、夫がパワーでもって支配してくるとき。いわゆるドメスティック・バイオレンス(DV)ですね。殴ったり蹴ったりするだけでなく、「お前は馬鹿だ」「ダメだ」と否定的なことばかり言われる、生活費をほんの少ししか渡してもらえない、いつ何をしているかメール等で管理され自由に外出もできない、セックスを強要されたり、避妊に協力してもらえない・・・。
こんな状態が続くと、ほんとうに身も心もぼろぼろになってしまいます。自信がなくなって『このままの自分でいいんだ』と思えない、何をする気力もわかない、憂うつ、不安や恐怖が強い、体調がおかしいといった状態になります。DVの状況にずっと置かれたら、誰でもこんなふうになりがちです。
男性も同じこと。強く逞しくとか、ちゃんと稼いで妻子を養わなくてはといった男らしさの仮面をかぶっていると、それが実現できなくなったりそれだけの力が伴っていないと、鬱になったり暴力をふるうようになったりすることがあります。
鬱になったとき、女性は、「誰々のために」と自殺を思いとどまることもできますが、それがない男性は歯止めが利きにくくなると思われます。
こんなことってありませんか?
でも、病院で診てもらっても異常がない。それは、このらしさの仮面=ジェンダーによる格差や固定観念=からきているのかもしれません。
「らしさの病」から回復するために、まず
(1)仮面(ジェンダー)について知る
(2)ジェンダーによる格差や固定観念から自由になる
(3)自分の気持ちに正直に、自分の気持ちを大切にして思いを吐き出す
(4)アサーティブな自己表現をする
(5)人と悩みを分かち合う
男女共同参画センターの講座や、地域で行われる男女共同参画地域推進員の講座などに参加してみてください。それから、ジェンダーに関する本もたくさん出ています。ムーブの図書情報室には、そういった本をたくさん集めていますので、ぜひ読みに来てください。目からうろこのようなことがありますよ。
仮面のために押し殺している自分。これで当たり前と思って、仮面をつけていることすら気づいていない人もいます。そして、憂うつでしんどくなっている。理想の仮面像を演じるのではなく、本当のあなたはどうなのかしら?
(1)のように知識を得、自分がどう感じどうしたいのか、もっと自分の気持ちを大切にしましょう。
ムーブ相談室でお手伝いします。同じような思いの人たちでグループを作るのもいいですよ。
怒りや不安、憎しみもしっかり感じていいのです。どんな気持ちも自分から出た大切な感情です、怒りももちろん。でも、怒りのようなマイナス感情はそのまま相手にぶつけてしまうとまずいですよね。社会に受け入れられる形で小出しにしましょう。貯め込むときついし、溜め込んじゃうといつか爆発してしまいます。爆発すると「あの人きつい」と言われたり、「ああ、やっぱり私はだめなんだ」とまたまた引いてしまうようなことになったりします。
自分を知るためには人と話すことが一番。もっと相談機関を利用してください。ムーブ相談室もお手伝いします。
相談することは、弱いからでも恥なことでもありません。ホントの自分を見つけるためにCRグループ(5~6人が集まって、母娘関係や仕事、子育てその他のテーマについて話し合い、ジェンダーに気づき自分らしさを取り戻していくためのグループ)もいいですよ。ムーブのグループ相談については市政だより等で募集しますので、注意して見て参加してください。
自分も相手も尊重しながら自己表現することをアサーションと言います。対立を恐れないで自分の気持ちは相手にしっかり伝えましょう。それには、相手批判をしない、I(アイ)メッセージ(私はこう思うと伝えること)が大切です。自分の思いをきちんと表現できれば、たとえ思いが叶わなくても、すっきりするものです。
アサーションの講座やグループワークをしている所を探してください。本も出ています。ムーブでもアサーションを取り上げています。
殴ったり蹴ったりのDV被害者は5人に一人です。DVに限らず、声に出してみると、案外、同じような問題で悩んでいる人はたくさんいます。仲間同士で悩みを分かち合い、一緒に考えていくと、自分ひとりじゃないと安心して、気持ちが楽になり、解決に向けての良い知恵が浮かんでくるものです。いろんな種類の自助グループがたくさんあるといいですね。立ち上げてください。アシストやムーブで応援します。