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こころのメッセージ


いのちの電話を通した希死者の心理について ~中高年女性のケース~

北九州いのちの電話

H15年9月掲載

 昨年(2002年)1年間の北九州いのちの電話の受信総件数は、31,350件、これには無答件数も含まれるので、相談電話として成り立った相談件数は、23,380件、性別の内訳は、男性13,283件、女性10,056件、さまざまな年代から、人生問題、保健医療問題、家族・夫婦・対人関係など、多岐にわたる問題や悩みが訴えられて来ています。

 そもそも「いのちの電話」は、自殺予防の運動から始まったものですが、相談電話のうち、自殺を訴えた件数は702件、相談件数の約3%でした。男性からが242件、女性からが460件、相談件数とは逆に女性の方が上廻っています。女性の自殺を訴えた件数の年代別割合は、多い方から30代24%、40代18%、50代18%、20代18%、60代3%、70代3%、10代2%、年齢不詳14%となっていて、中高年女性を40歳前後からとすれば、自殺を訴えた女性の過半数を占めることになります。

 女性の自殺を訴えた件数の問題別割合をみますと、人生37%、保健医療37%、家族12%、夫婦6%、対人3%…となっていますが、中高年女性では、保健医療問題が最も多く訴えられています。

 保健医療問題では、体の病気の苦痛から死にたいと訴えて来るケースも少しはありますが、大多数は心の病気と思われるものです。なかでも多いのは、うつ病と診断されて入退院を繰り返したり通院している人からのもので「うつ病がなかなか治らず、まわりの人に迷惑をかけるから死にたい」「何もする気になれず、生きているのがつらい」「死んだ方が楽になれそうな気がする」などと訴えて来ます。うつ病以外にも、抑うつ神経症、対人恐怖症、不安神経症、パニック発作などの症状を訴えて、そのつらさから死にたいと訴えて来るものも、かなりあります。少数ですが、アルコール依存症に陥り「抜けられない自分が、情けなくて死にたい」と訴えて来るケースもあります。

 次に多い人生問題では、夫や子供を亡くした喪失感、ひとり暮らしの孤独感などから死にたくなるケースが最も多く、家族がいても感じる疎外感、生き甲斐を感じられない空虚感などから生きる意欲を失って死にたくなるケースや、自分の性格や生き方が嫌で死にたいと訴えるケースなどもあります。なかにはうつ病とまでは言えないまでも、神経症的うつ状態と思われるものも少なくありません。

 家族問題では、夫のアルコール依存症や家庭内暴力など、子どもの不登校、引きこもり、家庭内暴力、精神障害、薬物依存症などのほか、寝たきり老親や痴呆の老親の介護などに悩まされて死にたくなる中高年女性が多いようです。子供のことで悩んでいるなかには、「この子を殺して、自分も死のう」とまで思いつめるようなケースもみられます。

 夫婦の問題では、夫の浮気、夫の家出、家庭内離婚、夫が何を考えているのかわからない、夫婦の会話がないなど、できれば離婚したいけれども、離婚してひとりで生きて行く自信もなく、死んだ方がましな気がするというような訴えをするケースもあります。

 対人関係では、職場の人間関係に疲れ果てた、近所づきあいがうまく出来ない、友人とうまくいかなくなったなど、さまざまな対人関係に苦しんで、死にたくなったと訴えるケースがかなりあります。

 このような、さまざまな問題や悩みに関連して死にたくなったと訴えて来る人に、いのちの電話では、解決策や助言を与えようとしているわけではありません。死にたいほど苦しい気持をそのまま受けとめ、寄り添って心から聴くことに徹するように努めています。中高年の女性からの電話は長くなりがちですが、30分、40分、時には1時間以上、気持が落ち着くまで聴き続けると「話を聴いて貰えたので、気持が少し楽になりました」などと言われて「ありがとう」とお礼の言葉で切って貰えることが多いようです。

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