家族の立場から
H27年4月掲載
今思えば息子からの情報発信は、幼い頃からあったような気がします。
しかし、それは誰もが持っている個性であり、何処のご家庭でも経験される事と気に留めることはありませんでした。
ところが、中学・高校と成長するに従い、その個性が社会生活や将来の自立といった「私の常識」から、大きくかけ離れたものに見えてきました。その後の私は、息子の将来や社会を生き抜くために、と信じて接してきました。結果として自分の思いを前面に出した、厳しいだけの父親だったのかも知れません。
そして、その行動は息子の個性に寄り添うものではなく、容易に埋めることの出来ない大きな隔たりを作ってしまったようです。
決定的になったのは、大学卒業が近づき就職を意識するようになった時期からでしたが、持ち合わせた個性のこともあり、息子の努力は実を結ぶことはありませんでした。
その直後から、家が荒れ、会話も出来ず、顔を見ることもなくなり、私の方も「こんなに努力しているのに何故分かってくれない」と非難と絶望の日々となってしまいました。当初は自分自身で解決しようとしましたが、何をしたら良いのか?誰に相談したら良いのか?気持ちは焦り状況を悪化させるだけでした。
そんな日々が数年続き、いよいよ行き詰った時に「すてっぷ」と出会うことが出来ました。初めての感想は「助かった!」で、妻と二人そう話した事を覚えています。何か具体的な指導や解決策を議論するのではなく、ひたすら私たちの話を聞いて頂きました。
この数年間、誰にも話せなかった苦悩や痛みに対して、その一つ一つに共感・理解を示して頂きました。その時の心の安らぎを忘れることはありません。
もう一つは息子の心の中の話です、誰も見ることの出来ない世界ですが、多くの経験から推測することは可能であり、大変新鮮なものでした。
その中で、将来に向けての大きなヒントをいただきました。それが「寄り添う心」です。
不安や怒り、焦りといった感情は、自分自身の思いとの差が生み出すものです。
同じような考えの人であれば多少のことは、話し合いや努力といった事で解決できるかも知れません。しかし、そうでない人には「相手の心に近づく」これが大切だと教えて頂きました。相手に何かを求めず、出来ないことを認める、これが「寄り添う心」です。
二年ほど前から「竹の親の会」という、寄り添うことが苦手であったと思われるお父さん会に参加させて頂いています。
「すてっぷ」の呼びかけで立ち上がった会で、年4回の近況報告を行っています。
私どもも含め、当初は大変厳しいお話ばかりでしたが、最近は少し希望の持てるお話も増えて来ました。
全てが魔法のように解決する訳ではありませんが、ここでの会話が少しだけ心の持ちようを変え、それが相手に接する態度に表れ、小さな希望に繋がっている気がします。
砂漠にオアシスが必要ですが、オアシスだけでは生きていけません。でもオアシスが無ければ生きる場所にも辿り着けません。
「すてっぷ」は、そんな場所です。まだまだ問題は解決していませんが、頂いた「寄り添う心」を大切にし、力の限り前進して行こうと思っています。
悩みをお持ちの方は、一度来て見ませんか?
少しだけ心が楽になるかも知れません。