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こころのメッセージ


アルコール依存症について

地域活動支援センター  北九州マック・指導員 坂本鍈輔

H26年12月掲載

自己紹介

先ずは、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は、2012年6月に北九州市小倉北区に開設された依存症(アルコール・薬物・ギャンブル・買い物・ゲーム・ネット・摂食等々)からの回復を支援するプログラムを持つ地域活動支援センター・北九州マックの当事者(アルコール依存)スタッフです。ソブラエティー(飲まない生き方・アルコール無しの生き方)は31年目になります。

アルコール依存症は病気です

アルコール依存症は、WHO(世界保健機関)も認定している病気です。
昔よく言われていた、意志が弱いとか、だらしがないからではなく肉体(脳)の病気と言われています。病気ですから早期発見、早期治療が望ましいのですが、「否認」の病気とも言われていて、依存症であることを認められないで飲み続けているうちに、どんどん病状が悪くなっていく進行性の病気とも言われています。

この病気の一番の特徴は、一杯飲むと自分でコントロールができなくなってしまうことです。結果として、いつも飲みすぎて色々な所に悪影響が生じてきます。

  • 肉体的(内臓疾患、糖尿病、脳萎縮等)
  • 精神的(うつ、自殺願望、情緒不安等)
  • 社会的(仕事、家庭、対人関係等)
  • 霊的(善悪の判断、良心、嘘をつく、愛情問題等)

全てを壊す、無くしてしまう、周りを巻き込んでしまう、死に至る病気とも言われています。「回復」はあるが、完治しない病気とも言われています。

完治しない病気とはどういう事でしょうか?

この病気はコントロール喪失が一番の特徴ですから、科学が進歩した現在でもうまくコントロールできる薬もない、専門家の医師も治すことはできない病気だと言っています。ですから、コントロールして、上手く問題なく飲むことができるようにはならないのです。

私も30数年の間、アルコール依存症の診断を受けた多くの仲間に出会ってきましたが、「依存症」の診断を受けたが、その後コントロールできて上手く飲んでいる仲間には残念ながら出会っていません。

では、「回復」とはどういう事でしょうか?

この病気から回復するには、アルコールを完全に止めることしか解決方法はないと言われます。しかし、この止めることが大変難しい病気です。当然、自分自身がアルコールを止めたいという意思は一番に必要ですが、意思だけでは永続的に止めていくことは非常に困難です。ですが、止めていく方法があります。

病気ですから治療が必要です。アルコール依存症の専門医を受診して、病気の正しい知識を得る必要があります。そして自分自身が病気を認めて受け入れるところから病気の治療が始まります。只、何もしないで頭で考えているだけでは解決はありません。自分自身の行動が必要です。

各地域に色々な社会資源があります。アルコールであれば、A・A(Alcoholics・Anonymous) や断酒会等の自助グループや私が現在居ります回復施設(北九州マック)があります。ここでは、回復への道をまとめた「12ステップ」を実践し、自分自身が持つアルコール問題を解決しながら「飲まない生き方」を体得し、アルコール問題からの回復を図るとともに、同じ問題を持つ仲間の回復の経験を伝えることを目的としたプログラム(12ステップ)を使い活動しています。自助グループや回復施設などを活用していけば、より確実に回復できると思います。

私が感じている回復とは、依存症者の人間関係が安定した柔軟なものになる過程を指しています。従って、アルコール依存症者で言えば、飲まないことは回復の手段ではあるが、それがただ一つの目的ではなく、回復とはその人らしい飲まない生き方を実践し、人間として成長していくことだと思っていますし、それが可能であると信じています。

自助グループ(A・A等)年末年始の参加のお勧め

年の瀬を迎えて世の中なんとなく、ざわざわしてきて、巷ではクリスマスだの、忘年会、新年会とお酒に接する機会が多くあり、アルコール依存症者にとっては一番危険な時期だと思います。

日本は昔からお酒中心の文化が発展してきた国で、アルコールに超寛容な国と言われており、世界で最も依存症からの回復が難しい国とも言われています。近年、飲酒運転問題、自殺問題、メタボ問題など、これまでになくアルコール関連問題に関心がもたれています。しかし、未だに依存症に対して正しく理解されているとはいえず、無理解や偏見が根強く残っていることも事実です。そのような状況の中で飲酒を一人で我慢していくのは至難の業です。こういう時こそ一人で頑張らないで、同じ悩みで助け合っている、自助グループのミーティングを利用してこの危ない時期を乗り越えることをお勧めします。そのための提案をいくつか書いてみます。

1. 危険な場所に近づかない(宴会の席、繁華街等)
2.  一人にならない(孤独感、疎外感、寂しさ等)
3.  安心できる場所に居る(自助グループ等のミーティング場)
4. 空腹を避ける(お腹を満たしていれば、イライラや怒りが抑えられる)

★北九州地区のA・A ミーティング場は年末、年始、元旦も開かれています。

北九州マックのプログラム

北九州マック(通所施設)は、ある一定の、社会との接点を持ちながら飲まない生活(生き方)をしていくことを、同じ問題を持った仲間達と一緒に集中的に体験していく場であり、利用者が退所後、A・A グループに帰属しながら地域生活をしていきやすい環境を整備していくことをその役割としています。北九州マックは、アルコール依存から自立に向かう旅路にあって、回復への基礎固めをする通所施設であり、そのターニングポイント付近に立ち、通所者をA・Aグループに橋渡しを行う通過機関として機能しています。

北九州マックに通うアルコール依存症者は、「アルコール中心に置いた生活習慣(思考パターンや行動パターン)」を長年かかって習慣化してきました。北九州マックでは、利用者がマックプログラム(A・Aの12ステップに基礎を置く)を活用することによって生活のリズムを修正し、新たな生活習慣を獲得していくことを目指しています。

北九州マックは年中無休、一年365日開所しております。そのプログラムは、①基本プログラム、②生活支援プログラム、③就労支援プログラム、④アフターケアプログラムで構成され、当該プログラムの下、マックでは個別相談やグループセラピー等により回復に向けての相談・助言・提案を行っています。

全国マックグループ基本理念(全国マック協議会・全国17施設参加)

援助機関として経験と力を分かち合い、ソブラエティを維持するための、知恵や手がかり(回復プログラム)を提供することにより利用者が新たな「生き方」を育むための環境を整備する

どんなに酷いアルコール依存症者でも回復に向えるプログラムがここ(マックグループ施設)にある。経済的、社会的に、そして生き方に問題を抱えて施設を訪れるアルコール依存症者に対し、私たちは生きてきた経験を分かち合い、回復への希望のメッセージを伝え、更に地域社会に向けて希望のメッセージを発信していくことをその使命とする。

訪れる者に対し、新たな「生き方」に向う手助けを行うために、AA12ステップに基づく回復プログラムを提供し、共に成長していくことを私たちは目指している。

「AAとの出会い」や「AA、12ステップを使って回復に道を歩んでいる人達との出会い」によって得られた「回復への希望」を、私たちは確信をもって、施設を訪れるアルコール依存症者に伝え、彼らが地域の12ステップグループに繋がれるようその橋渡しを行っていく。

これらを実現するために、私たちは次に示す指針のもとで行動する

信頼をして

  • 施設を訪れるアルコール依存症者の人間としての尊厳を尊重し、回復のプログラムを提供する。
  • 仲間意識が漂う雰囲気の中で、互いのアノニミティを大切にし、安心してくつろげる居場所を提供する。

正直に

  • 提供できるサービスと提供できないサービスを見分け、常に私たちの「無力」な部分を認識し続ける。

謙虚さをもって

  • 医療・保健・福祉などの専門機関との関係を大切にして、地域のなかで様々な人やグループとの協働を図っていく。
  • 自己中心的な思考に支配されることなく、誰をも(職員相互にあっては互いに)コントロールすることはしない。

伝え続ける

  • 地域社会に私たちの「回復へのメッセージ」を伝えていく。

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